「金木犀」

第5回目です。お題は金木犀。

「金木犀」

うちの庭には大きな金木犀の木がある。毎年秋になると、細かいオレンジ色の花が咲いて甘酸っぱいような香りが漂う。ぼくはこの香りがする季節になると、あることを思い出す。親友だったちひろのことだ。ちひろって名前だけだとよく女の子と勘違いされるけど、実は男の子なんだ。ちひろとぼくは親友だった。だった、というのは、ぼくはちひろの親友をやめたからだ。ちひろはちょうど金木犀の香りがするころに、遠くの町に引っ越していった。ぼくとちひろは同じ中学に入って、野球部でがんばろうって約束していた。男の固い約束だった。それなのに、ちひろはぼくの知らないところに行ってしまった。引っ越しを打ち明けられた時、ぼくはカッとなって言ってしまった。
「ちひろなんて大っ嫌いだ。ぼくたちの約束忘れたのかよ!本気で約束したんじゃなかったのかよ!もうおまえと親友なんかやめてやる!」
それっきり、謝ることもできずにぼくたちは離ればなれになってしまった。
今度の冬が終わって春になったら、ぼくは多分高校生になる。受験生にとって長い冬はつらいだろう。そんな季節の手前で、金木犀の香りに包まれながら、ぼくはあいつのことを考えるんだ。
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by rain-drop_amefuri | 2011-10-07 23:02 | お題
詩と童話と時々日記
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